女性医師が解説!敏感肌シリーズ1:敏感肌の原因や肌荒れの状態とは?
多くの方々を悩ませる『敏感肌』。
現代社会においては、私たちを取り巻く環境が大きく変化しています。
そのような環境で、なんらかのお肌トラブルが生じてしまう状態が敏感肌と呼ばれているようです。
しかし、本当にその正体をご存知ですか?
敏感肌において最も大きな問題となるのは、原因や症状がハッキリとしない肌荒れなのではないかと思います。
そこで今回は、敏感肌の原因やセルフチェック、引き起こされる肌荒れの状態について、またスキンケアの基本についてご説明していきます。
敏感肌ってどんな肌?
よく『敏感肌』という言葉を目にしたり耳にしたりしますよね。
近年では、食生活や環境の変化、ストレスの増加などによって個人の体質が変化して、感受性が増したことが敏感肌増加の原因ともいわれています。
皮膚科学的には『敏感肌』というものに、明確な定義がありません。
一般の方が使用して大丈夫な物質でも、かゆみやほてり、痛み、発赤や発疹などの症状を起こしやすいお肌であり、医学的には脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎という診断名が付けられることもあります。
そのため、敏感肌といっても、とらえ方は人それぞれになってしまうんですね。
例えば、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を起こした状態を指す場合から、小さな原因がきっかけとなってお肌トラブルを起こしやすくなる一時的なお肌の不調を指す場合もあります。
またスキンケアのとき、コスメによってチクチクやヒリヒリを感じる、お肌がつっぱる感じがする、目にみえる症状は特にないけれどなんとなくお肌の調子が悪い、などの状態も含めて敏感肌と呼ばれる場合もありますよね。
いずれの場合も含めて、健康かつ万全なお肌の状態では何も感じないような、わずかな刺激にも敏感に反応して、さまざまなお肌トラブルが起こる肌状態が、一般的に『敏感肌』と総称されているようです。
自分のお肌が敏感になっているかもしれないと感じたときには、何らかのお肌トラブルが起こりそうだというサインでもあります。大ごとになる前に、スキンケアや生活習慣を見直して、先手を打ってトラブルを防ぐことも大切。
また、敏感肌の特徴として挙げられるのは、お肌が乾燥しがちだということです。敏感肌でまず気になるのは顔ですが、手足や背中、頭皮など、顔だけに限らず全身の色々な部位も乾燥して、刺激に敏感な状態になることがあります。
特に乾燥しがちな季節には、体のあちこちがかゆくなってつい掻いてしまう、衣服が擦れたところが赤くなる、頭のかゆみやフケがいつも以上に気になる、といった症状がよく見られます。
あなたはどう?敏感肌チェック
敏感肌には、大きく分けて2種類あります大きく分けて2種類あると考えられます。
コスメの多くがお肌に合わなくてかゆみやかぶれなどを起こしてしまい、使えるアイテムが限られてしまう、本当の(?)敏感肌の方。
そして、普段の生活では特に問題ないものの、月経の前やストレスが溜まったときや、体調不良のとき、季節の変わり目など一時的に、普段使用しているコスメが合わなくなる自称敏感肌の方。
いわゆる『敏感肌』のうち50〜70%が自称敏感肌に該当するといわれているのです。
敏感肌=デリケートで繊細なお肌、というわけではないので、誤解しないようにしましょう。
自分がどちらの敏感肌かわからない方は、下記のセルフチェックを試してみてください。
- 乾燥
- お肌が乾燥するとヒリヒリ感じたり、痒くなったりしやすい
- スキンケア
- 定期的なピーリングを行なっていて、その後にお肌が赤くなる
- 刺激(1)
- 汗をかいたときにお肌が痒くなる
- 刺激(2)
- コスメを変えるとお肌が赤くなる、しみてピリピリする、痒くなる
- 接触性皮膚炎
- 花粉や動物の毛などにアレルギーがある、ぜんそくやアトピー性皮膚炎と診断されたことがある
- 皮脂分泌の低下
- 冬になるとお肌が乾燥して、粉をふくこともある
- 季節による変化
- 季節の変わり目になると、肌荒れしやすくなる
- 紫外線の影響
- 日光にあたるだけで、お肌が赤くなったり湿疹ができたりしたことがある
- ストレス
- ストレスが多く、溜まっているという自覚がある
- 生活習慣(1)
- 睡眠時間が不足している、いつも寝不足である
- 生活習慣(2)
- 外食やインスタントフードで済ませることが多く、野菜をあまり摂取していない
- 月経(ホルモンの関係)
- 月経の前後で肌荒れや感情の変化が起こりやすい
これら12項目のうち、当てはまる数が多いほど敏感肌の傾向があることになります。
敏感肌の原因
健康な状態では、皮膚のバリア機能というものが働いていて、お肌に充分な水分が保たれ、外部刺激を受けにくくなっています。
ところが敏感肌だと、バリア機能が低下しているので、お肌から水分が失われやすく、外部刺激によるダメージを受けやすい状態になっているのです。
皮膚のバリア機能には重要な3つのファクターがあります。
- 細胞間脂質
セラミドなど、角質層の細胞間で水分をはさみこんで保持する役割 - NMF:Natural Moisturizing Factor(天然保湿因子)
角質層細胞に水分を引き寄せる役割 - 皮脂膜
お肌の表面で膜を張り、水分の蒸散を防いで閉じ込める役割
これら“バリアの3因子”が低下するとお肌が乾燥し、さまざまな外部刺激に反応して、かゆみや赤み、かぶれなどのお肌トラブルが起こりやすくなってしまうのです。
バリア機能が低下する原因
どれも当てはまらないという人の方が少ないと思いますが、思い当たる原因が多いほど、敏感肌になりやすい、あるいは敏感肌である可能性は高くなります。
敏感肌とお肌トラブルの関係
「敏感肌だから肌荒れしやすいの?」
「よく肌荒れする私は敏感肌なの?」
実はどちらも正解であり不正解でもあるのです。
敏感肌と肌荒れは、どちらも原因にもなり得ますし、結果にもなり得ます。要するにニワトリとタマゴのような関係なんですね。
この関係性を断たないと、敏感肌⇄肌荒れという悪循環が続くことになってしまいます。
肌荒れを起こす敏感肌の原因
敏感肌が肌荒れを起こしやすい原因の中で、最も見過ごせないのが“乾燥”です。
乾燥によってお肌のバリア機能が低下すると、外部からの刺激を受けやすくなり、摩擦や雑菌・花粉などに対する抵抗力が弱まってしまいます。
その結果、いつも使っていて問題がないはずの化粧品で赤みやかゆみが出たり、肌荒れを起こしたりしてしまうのです。
肌荒れした敏感肌の症状
外部刺激を受けた敏感肌では、肌荒れの初期症状として赤みが出現します。
特に皮膚が薄く、外部との接触が多い目の周りや鼻、頬骨などの部分から症状が出やすいのも特徴です。
一時的な状態だからすぐに治るだろうと思って放置しておくと、症状が進んでいき、お肌が完全に乾燥した状態になります。
さらに悪化すると、粉をふいたような状態になったり、ヒリヒリした痛みやかゆみが出たり、皮が剝けてしまったりして、ひどい場合には専門的な治療が必要になることもあるんです。
肌荒れした敏感肌の状態
前述しましたが、通常では、お肌の表皮の直ぐ下にある約0.02mmの薄い角質層がバリア機能の役割を担っています。
こんな薄さでお肌の水分を保持し、外部からの刺激をブロックしているのですから大変な働きですよね。
角質層の水分が保たれ、バリア機能を維持するためには、表皮の皮脂、角質層の細胞に含まれるNMF(天然保湿因子)、細胞同士をつなぐセラミドなどの脂質が充分に満たされていることが条件です。
進行した敏感肌では、これらの成分が減少しているので、角質層がスカスカの状態になっています。
そのため、バリア機能が正常に働かず、お肌の内部の水分が逃げてしまい、外部刺激をブロックできずに肌荒れを起こしてしまうのです。
敏感肌による肌荒れは、乾燥による赤み、かゆみ、痛みだけではありません。
お肌の皮脂が薄いために雑菌や紫外線が侵入しやすいので、ニキビなどの炎症や色素沈着といったトラブルも起こりやすい状態になっています。
肌荒れを起こさない!敏感肌のスキンケア方法
敏感肌や肌荒れに悩んでいる方々の中には、試行錯誤しすぎてしまい、結局どんなスキンケアが良いのかわからなくなってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
敏感肌と肌荒れの原因を考えてみると、できるだけシンプルかつ、お肌に負担の少ない方法が良いことがわかります。
道に迷って困ったときは、思いきって原点に戻ってみましょう!
敏感肌の方は、お肌のバリア機能を正常に保つために、毎日の優しいスキンケアが重要です。
そしてスキンケアの基本といえば“洗浄・保湿・遮光・メイク”の4つ!どれも大切なのですが、敏感肌の方は特に“保湿”を重視してお肌のバリア機能をサポートしましょう。
健康で美しいお肌とは、水分と油分のバランスが整っていて、うるおいのあるなめらかな状態。
一方、バリア機能が低下した敏感肌では、水分をキープするのが難しいため、みずみずしさを保てずに乾燥してしまいます。
ポイントは保湿!バリア機能の正常化
保湿は、敏感肌のスキンケアにおいて最も重要なことのひとつです!お肌の水分量を整え、適度な皮脂を保ちましょう。
それがバリア機能の正常化につながり、外部刺激によるダメージを受けにくいお肌をつくります。
大切なのは、有効な保湿成分をお肌のバリア機能を担う角質層へしっかりと確実に浸透させることです。
単純にお肌に水分を与えても、表面の水分は保持されることなく、蒸発してしまうだけなので注意してくださいね。
“角質層への保湿”これがバリア機能の正常化には必須なことです。
「低刺激」だけにこだわらない優しい洗顔法
敏感肌の洗顔は、お肌に刺激を与えず、また必要以上に皮脂を落としすぎない方法が基本になります。
洗顔時に手で顔をこする行為ですら、摩擦という刺激になるため、しっかりと泡立ててからこすらずに泡で優しく洗いましょう。
汚れと泡をなじませるように、直接指が触れないくらいの優しさで行います。
流すときは、お肌より少しぬるめのお湯を使い、こすらずにお湯を顔にあてる感じで、すすぎ残しがないように気を付けてください。
熱めのお湯ですすいでしまうと、その後の乾燥を引き起こすことがあります。また、洗顔前のクレンジングにも注意してくださいね。
ダイレクトにお肌に接触するという意味では、クレンジングは洗顔と同様にとても重要です。
洗浄力ばかりを重視せず、あくまでもお肌への影響を考えましょう。
メイクの落としすぎは、敏感肌にとって必要な皮脂までも取り除いてしまうリスクがありますので、低刺激性のクレンジングで擦らず優しくメイクオフしてあげてください。
シートタイプの拭き取りクレンジングは敏感肌の方にとっては厳禁です!
クレンジングの摩擦のリスクを減らすために、洗顔料・石けんだけでオフできるメイクコスメを使用する、というのもひとつの手段かと思いますよ。
ダメージを起こさずスキンケア化粧品を使用するために
初めてのコスメを試すときには、パッチテストを行ってから使用しましょう。
具体的なパッチテストの手順は、以下のとおりです。
- 入浴後に二の腕の内側に塗る
- 24時間放置して赤みや腫れなどの異常がないか確認する
- フェイスラインなどに少量を塗り、異常がないか再度確認する
という簡単な方法です。
コスメの種類によってやり方を変えることもありますが、基本的にはこの3ステップでOK。
アイテムを変えても肌荒れが改善されない場合には、お肌のトラブルを引き起こす共通の成分が含まれている可能性もあります。
化粧品には全成分表示が義務付けられていますので、どの成分が自分のお肌に合わないのかを確認してみるのも賢い手ですね。
ただし、医薬部外品には全成分表示がないものもあるのでご注意を。
適切なスキンケア方法
保湿ケアのタイミングは入浴直後がオススメ!
お風呂上がりのお肌は、十分にうるおっていると思われるかもしれませんが、実はこのときのお肌は無防備で水分が蒸発しやすい状態です。
ですから、できれば洗顔直後に保湿力のある化粧水で水分を補ってあげましょう。
その後、乳液やジェルで、乾燥しやすい目もとや口周り、頬をさらに保湿。
仕上げに、クリームやオイルでお肌に浸透させた水分の蒸発を防いであげる方法でケアすると、効果が期待できますよ。
できれば刺激を避けるためにコットンは使用せず、手の平全体で優しくなじませるようにケアしましょう。
こんなコラムを書いておいてナンなのですが、「お肌がキレイ」とかではなく「恐ろしく強いお肌」なので敏感肌とはご縁がないのです…。
いわば『鈍感肌』というわけですね(苦笑)
ですが、洗顔直後の保湿はお肌タイプに関わらず、スキンケアにおいて大切なことなので必ず実践しています。
私は洗顔後にじっくりと入浴するので、お風呂から上がって保湿を始めると、洗顔からずいぶん時間が経っていることになります。
そこで洗顔後に、おなじみのお手軽なハトムギ化粧水でパシャパシャとお顔を保湿してから、ゆっくりとお湯に浸かります。
化粧水が多少蒸発してしまっても、バスルーム内はある程度湿度が高いので大丈夫かな…なんて思いつつ(笑)。
ジェルやクリームをつけて入浴しながら顔のマッサージをすることもありますよ。
お風呂から上がった後は、しっかりとした保湿をはじめ一通りのスキンケアをゆったりと行うように心がけています。
敏感肌のお手入れのポイント
詳しくは次回にもご説明致しますが、簡潔にポイントを挙げておきますね。
全てスキンケアにおいては重要なことなのですが、敏感肌でお悩みの場合には特に気を付けていただきたいことです。
- お肌を清潔に保つこと
- 汗やメイクなどの汚れがお肌に残っているとバリア機能の低下につながります。
丁寧な洗顔と充分なすすぎを行いましょう。 - お肌を保湿してうるおいを保つこと
- 敏感肌ではお肌のバリア機能が低下していまするので、過保護なくらいの保湿ケアをしてあげましょう。
- お肌への刺激を最小限にすること
- お肌のバリア機能をさらに低下させないよう、角質層への摩擦など外的な刺激を与えないように注意しましょう。
- 紫外線対策をしっかり行うこと
- 角質層のバリア機能が低下していると、紫外線の影響をより受けやすくなります。
季節や天候に関わらず、日焼け止めなどで紫外線対策を万全に行ってください。 - 規則正しい生活を心がけること
- なかなか難しいことではありますが、起床・就寝時間をできるだけ一定に、そして睡眠時間をしっかり確保しましょう。
バリア機能回復のためにお肌が再生する生活リズムを身につけると良いですね。 - バランスの良い食生活
- 緑黄色野菜をしっかりと摂取しましょう。
便秘になると、ビタミンB群の合成が低下してお肌に悪影響を及ぼしますので、便秘を起こさない食生活を心がけてください。 - 精神的なストレスのコントロール
- スポーツや趣味の時間でストレスを解消したり、誰かに悩み事を相談したり、何らかの方法で可能な限り感情のコントロールを行うようにしましょう。
ストレスはお肌にも悪影響を及ぼしてしまうので、溜め込まないようにしてください。
敏感肌は、決して治らない病気というわけではありません。
なにかのCMみたいですが「諦めないで」と申し上げたい気持ちです。
敏感肌というのはあくまでも状態・症状なのですから、改善法や対策がきっとあるはずなんですね。
そのためには、敏感肌についての知識を得て、根本的に原因を改善していくとともに、肌荒れにもきちんと対応していくことが大切です。
敏感肌と肌荒れの関係を知り、ご自分の肌の状態を理解し把握してあげることが改善への一歩です。
まずは、適切なスキンケアで効果的な保湿を行い、お肌のバリア機能を回復していきましょう。
次回の敏感肌シリーズ2では、さらに具体的なスキンケア方法やアイテム選びについてご紹介していきますので、合わせてご覧くださいませ。
参考文献
- 美容のヒフ科学 改訂9版(南山堂)著・安田利顕 改訂・漆畑修
- 日本化粧品検定1級対策テキスト 著・小西さやか(主婦の友社)
- 日本化粧品検定2級・3級対策テキスト 著・小西さやか(主婦の友社)
- 一般社団法人 日本コスメティック協会 検定テキスト コスメQ&A 第2版(中央書院)
- 一般社団法人 日本コスメティック協会 検定試験参考図書 コスメマイスター・スキンケアマイスター(メディカルレビュー社)
- 化粧品成分検定公式テキスト 一般社団法人 化粧品成分検定協会 編・監修(実業之日本社)
- 化粧品成分ガイド 第6版 編著・宇山光男、他(フレグランスジャーナル社)
- 敏感肌の基礎知識 – 敏感肌 | スキンケア大学 → ホームページはこちら
- 【医師監修】“敏感肌”の正体 | スキンケア大学 → ホームページはこちら
- 敏感肌|くすりと健康の情報局 → ホームページはこちら
著者プロフィール
脇坂 英理子
東京女子医科大学医学部を卒業。元々は麻酔科を專門としていたが、その後一般的な内科と美容内科・美容皮膚科も経験。現在は、医療・健康・美容などの知識を活かしライターとしても活躍中。
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